ある日の午後、いつものようにトイレを済ませてレバーを回したところ、水が引かずに便器の縁ギリギリまで水位が上がってきました。慌ててラバーカップを取り出し、何度も作業を繰り返しましたが、状況は一向に改善しません。それどころか、隣の浴室や洗面所の排水口からも、ゴボゴボという不気味な音が聞こえてくるようになりました。これはただの紙詰まりではないと直感し、急いで近所の水道修理業者に連絡を入れました。駆けつけた修理スタッフの方は、トイレの様子を一目見ただけで、外の汚水枡を確認しましょうと言いました。正直なところ、それまで私は自分の家の庭に汚水枡というものがあることすら意識したことがありませんでした。スタッフの方に案内されて庭の植え込みの近くにある小さな丸い蓋を開けると、そこには衝撃的な光景が広がっていました。枡の中はトイレットペーパーの残骸や汚物、そして何やら白い固まりで一杯になっており、水が全く流れていない状態だったのです。業者の説明によると、この白い固まりの正体は、長年の生活排水から蓄積された油脂成分や、流れきれなかった排泄物が固まったものだそうです。特に我が家のような築二十年を超える住宅では、コンクリート製の汚水枡が使われていることが多く、経年劣化でできたわずかな段差や隙間に汚れが引っかかり、そこを起点として大きな詰まりに発展することが多いのだと教えてくれました。さらに驚いたことに、近隣の庭木の根が枡の継ぎ目から内部に侵入し、網目状に広がって排水をせき止めていたことも判明しました。作業は高圧洗浄機を使って行われました。強力な水圧で枡の内部や配管にこびりついた汚れを削ぎ落としていくと、黒い水と共に大量の異物が流れ出していきました。一時間ほどの作業でようやく水は澄み渡り、インバートと呼ばれる水の通り道が綺麗に見えるようになりました。その後、家の中のトイレを流してみると、今までの重苦しい流れが嘘のように、スムーズに吸い込まれていきました。あの時の安堵感は今でも忘れられません。今回の経験を通じて痛感したのは、見えない場所のメンテナンスがいかに大切かということです。トイレの不具合は便器そのものに問題があると考えがちですが、実はその先の排水経路である汚水枡が悲鳴を上げている場合があるのです。業者の方からは、今後は定期的に自分でも蓋を開けてチェックし、汚れが溜まる前に掃除をすることを勧められました。家の設備はすべて繋がっており、末端の汚水枡を労わることが、結果として家全体を守ることに繋がるのだと学びました。
我が家のトイレが流れない原因は庭にある汚水枡の詰まりにありました